■高尿酸血症の基本的情報と最近の話題
<高尿酸血症とは>
人間の体中の細胞には、ほぼ全てに遺伝子が入っています。
遺伝子である核酸(かくさん)を構成している主成分がプリン体という物質になり、プリン体が分解されたのが尿酸になります。体内で作られた尿酸のうち、約80%は腎臓から尿となり、残りの約20%は便や汗で排出されます。
しかし、排出量が少なかったり、量が多く排泄が追いつかなかったり、その両方だったりすると血液中の尿酸が増加します。
血液中の尿酸が増加し、正常値を超え高い状態が、高尿酸血症です。血清尿酸値の正常上限は7.0mg/dLと定められており、それ以上高い状態になると高尿酸血症となります。

※血清尿酸値は、高尿酸血症・痛風の治療ガイドラインより参照

 

<高尿酸血症の原因>
高尿酸血症は、2つに分類されています。
1つ目は、体内の尿酸が過剰に産生される“産生過剰型”。2つ目は、腎臓から尿酸の排泄が減少する“排泄低下型”になります。
また、それぞれ中でも尿酸代謝の異常が一次的である“原発性”と腎不全や白血病、骨髄腫などの他の病気や薬剤などによって起こる二次的な“続発性”に区別されています。

その中でも、一次的な“原発性”の割合が圧倒的に多く、遺伝的なことが原因のものもありますが、その殆どが原因不明とされています。

 

<高尿酸血・痛風の最近の話題>
2010年に発表された高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン第2版によると、これまでの「尿酸塩沈着症は痛風関節症や腎障害などの原因になる」「血清尿酸値が7.0mg/dL」の定義はそのままに、新たに下記内容が追加されました。

 

生活習慣病の増加に伴い、再度リスク解析した結果、血清尿酸値が高いことが原因で疾病を発症する可能性があると示された。それにより、血清尿酸値が7.0mg/dL以下であっても、血清尿酸値の上昇とともに生活習慣病のリスクが高まるとし、特に女性に関しては、男性よりも低い血清尿酸値から潜在疾患の検査と生活指導を進めると定義した。

また、大規模な調査結果により、高尿酸血症および痛風の疫学的な動向がまとめられ、成人男性、特に30代以降の有病率は高尿酸血症で39%、痛風は1%であることが分かった。

 

高尿酸血症が元となる疾患の発症リスクも記載されています。

 

痛風においては、血清尿酸値が7.0mg/dLを超え、高くなればなるほど痛風関節炎の発症リスクが向上し、高尿酸血症の罹病期間の長さや高度化が痛風結核に繋がるとの見解を示している。
また、食品摂取関連では、肉類をはじめ砂糖入りのドリンクや果糖の摂取量の多い方は発症しやすいとある。さらに、高いリスクがあるアルコールについては、ビールが最も痛風を発症しやすいとされている。その一方、コーヒーを多く摂取する方や長距離のマラソン・ランニングを行う方は、痛風になりにくいとある。

今回、改訂されたガイドラインでは、生活習慣病の是正を目的としている点を強調しており、非薬物療法としての生活指導が重要であるとの考えが多く見られる。

第2版は、第1版に新たに生活指導を扱った章を追加し、食事療法や飲酒制限、運動の推奨を行うことで、肥満が解消でき、血清尿酸値の低下が期待できると記載されている。

 

食事療法では、適切なエネルギー摂取はもちろん、プリン体や果糖の過剰摂取を制限、水分を十分に取ることを推奨しています。

プリン体含有量の目標数値としては、1日400mgを超えないような食事を行い、尿の中性化に有効なアルカリ性食品や乳製品を多く摂取するのが望ましいとあります。

飲酒については、アルコールを多くとることで、血清尿酸値が上昇し、痛風頻度も増加するとされています。そのため、1日の目安量は日本酒で1合、ビールでは500ml、ウイスキーでは60mlとなります。中でも、プリン体を多く含むビールは、痛風発症のリスクのほか、肥満助長の点でも注意が必要です。

運動については、適正体重を目標に、週3回程度の軽い運動が様々な病態を改善するために効果的とされています。

麦島内科クリニック