■痛風の基本的情報と最近の話題
<痛風とは>
血液中の尿酸値が高い数値になった状遺体が継続してしまうと、尿酸は尿酸塩という結晶になり、関節や腎臓などに溜ってくるようになります。
このように高尿酸血症が原因となり、急性の関節炎を起こす病気が痛風です。

日本では、明治以前は極めてまれな病気でしたが、1960年代頃から患者が急増しました。
痛風患者はその9割を男性が占め、特に40〜50代に多く見られます。
女性患者は残りの1割程度に止まり、発症する場合はほとんどが閉経期以降です。
女性ホルモン(エストロゲン)が腎臓での尿酸の排泄を促進する事で痛風になりにくく、
閉経後はエストロゲンこのホルモンの分泌が低下するので、血液中に尿酸がたまる傾向になるからだと考えられています。

 

<痛風の原因>
かつては痛風は“帝王病”と呼ばれ、食生活の豊かな裕福な層の人々に多く見られましたが、現代では食生活の欧米化やアルコールの摂取量の増加などにより、誰もが痛風になってしまう可能性が大きくなってきました。
食生活の多様化で、過食の習慣がついてしまった事が大きな要因で、高カロリーの食事は尿酸を増やしてしまうことに繋がります。
また、アルコールや果物類(果糖)の取りすぎやストレス、運動のし過ぎも尿酸が上がってしまう原因です。

<痛風の症状>
飲酒やストレスなどで痛風の発作が出る場合があります。
痛風発作は、手足の付け根などに腫れや熱を伴い、激しい痛みが起こります。
痛みのピークは24時間ほど続き、1〜2週間で自然に痛みはなくなっていきます。

発作が起きてしまっても治療せず、放置してしまうと、痛風結節と呼ばれる関節などに尿酸塩の結晶ができてしまい、こぶのように腫れてきます。手足の関節や耳たぶ、ひじ、ひざ、アキレス腱などの比較的体温が低い部分に多く見られます。
また、尿酸塩が腎臓に溜まると痛風腎と呼ばれる腎機能障害を引き起こしてしまいます。
その他にも、尿酸値が高くなると尿路結石ができやすくなる事もあります。

 

<痛風の検査と診断>
痛風の診断は、血清尿酸値、痛風関節炎の発作、痛風結節などの症状、関節液の状態などで行われます。
関節リウマチや外反母趾、変形性関節症、偽痛風、など類似する病気も存在するため、これらと区別するための検査も行われます。

更に、進行状況や合併症の有無などを調べるために、X線検査、CT検査、腹部超音波検査などの検査を行います。
脂質・糖・肥満度検査、心電図や心エコーなどの循環器の検査も行い、合併症の有無を確認していきます。

 

<痛風の合併症>
高尿酸血症・痛風は、冠状動脈疾患の発生率が通常よりも2倍高いとのデータもあり、狭心症、心筋梗塞などの危険因子のひとつとされています。
高脂血症や糖尿病、肥満、高血圧などを合併してしまうケースが非常に多く、結果、脳血管障害や心臓病を併発してしまう事も少なくありません。

 

<痛風の治療>
痛風治療は、まず痛みを取り除くための痛風発作を抑える為の治療と、尿酸値をコントロールする為の治療を行う2ステップからなります。
ほとんど薬物療法が中心となりますが、食事面やアルコール・タバコなどの嗜好品に関する生活習慣の改善も合わせて指導していきます。

薬物治療はまず、痛風発作の薬物治療から始まります。痛風発作の予兆が見られる場合は、コルヒチンを服用しますが、本格的な発作が始まってしまったらコルヒチンは効果が期待できないとされているので、その場合は非ステロイド性抗炎症薬を短期間に多めに服用します。副腎皮質ステロイド薬有効とされています。

次に尿酸値をコントロールする為に、尿酸降下薬を用います。体のなかでの尿酸の産生が増加した患者さまには尿酸合成阻害薬(アロプリノール)、尿中への尿酸の排泄量が低下した患者さまには尿酸排泄促進薬(プロベネシド、ベンズブロマロンなど)を用います。
原則として、ゆっくり、しっかりと、です。急激な尿酸値の低下は発作を招きかねません。

それ以外にも薬物療法の注意点は、合併症の存在です。
尿路結石の発症経歴があったり、腎機能に問題のある患者さまの場合、尿酸排泄促進薬の使用で合併症を悪化させる危険性があるため尿酸生成阻害薬を服用し、尿中尿酸排泄量を抑制しなければなりません。

尿酸の腎臓への沈着や、尿路結石の発症を予防するためには、尿の量を増やすことが必要です。そのため、1日に飲む水の量を増やし、1日の尿の量を通常の約2倍の2000ml以上に増やしていきましょう。

食事療法では、痛風の患者さまの尿は酸性度が強いため、それを補う為にアルカリ食品である野菜や海藻などを多くとるようにします。
食事療法でも充分な酸性尿の改善がみられない場合は、尿アルカリ化薬(クエン酸配合剤)を服用する必要があります。尿phを6.0〜7.0に保つように薬剤の投与を調節しなければなりません。

高尿酸血症・痛風には、前述したように肥満・高血圧・脂質代謝異常症・糖尿病が高い度合いで合併してしまうと言われています。
痛風の患者さまの食事では、食べてはいけない食品はありませんが、過食は良くありません。肥満にならないよう意識して食事をる必要があります。
また、塩分や脂肪分を制限し、脳血管障害、心臓病などの合併症を防ぐ事も必要です。

 

<痛風の予後>
ほとんどが1週間ほどで痛みは無くなり、症状が全く無くなります。
半年から1年ほど発作が無くても、また同様な発作を起こすことがある為、注意を怠ってはいけません。

痛風の薬物治療を開始してからでも、食事療法や運動療法を行う事で、薬を飲まなくても尿酸値を正常値へ戻すことができ、薬物療法を停止する事が出来る事もあります。

 

<日常生活の注意点>
・食事(プリン体)の制限
プリン体は多くの食品に含まれている為に、食事の量自体を減らすことが必要になってきます。特にプリン体を多く含む食品は、いわし、えび、かつおぶし、白子、レバーなどです。とり過ぎないよう注意しましょう。

・アルコール制限
プリン体が多く含まれるアルコール類は、ビールや発泡酒です。
日本酒やワインはビールの1/10ほどで、更にウィスキーや焼酎などはごく少量になります。

・水分摂取
肝臓から尿に尿酸は排泄されるます。充分な水分の接種で、尿の量を増やすことにより、多くの尿酸が尿中に排出されます。

・軽い運動
ウォーキングや水泳のような軽めの運動(有酸素運動)で尿酸値を上げず、無理の無い運動を長く続けることがポイントです。
突然の激しい運動は、逆に尿酸値を上げてしまい、痛風の発作を引き起こしてしまう事があります。また、炎症を起こしている場合などは、ひかえた方が良いでしょう。

 

<痛風の注意点>
症状が感じられなくなると薬の服用を勝手にやめてしまい、尿酸値が高い状態が続いたり、尿酸値の変動が激しくなったり、痛風の発作が誘発されたりという事が起きてしまいます。定期的な検査ときちんとした薬を服用で、尿酸値のコントロールを続ける事が大切です。

麦島内科クリニック