誤嚥性肺炎
■誤嚥性肺炎
<誤嚥性肺炎とは>
誤嚥性肺炎は、本来、食道を通る食べ物や唾液などが誤って気管に入ることで、肺へと流れ込み細菌が増殖して起こる症状です。
発症の多くは、高齢の方で何度も再発するのが特徴です。再発を何度も繰り返していると、耐性菌が発生します。耐性菌は、抗生物質治療に抵抗性を持つ菌になるため優れた抗生物質が開発された現代でも、多くの高齢者が死亡する原因となっています。
<誤嚥性肺炎の原因>
誤嚥性肺炎は、脳卒中や脳梗塞といった脳血管障害や神経系疾患などにより、神経伝達物質が欠乏することで、咳反射や嚥下反射などの神経活動が低下して起こります。
神経活動が低下すると、睡眠中など無意識のうちに細菌が唾液と一緒に肺へと流れこみ(不顕性誤嚥)、細菌が増殖することにより肺炎を引き起こします。また、嘔吐の際に逆流してくる胃液や食べ物などが肺へと流れ、引き起こす場合もあります。
<誤嚥性肺炎の症状>
一般的な肺炎の症状としては、発熱・咳・痰(タン)・呼吸困難・胸痛などがあります。しかし、高齢者の場合、これらの訴えがはっきりしていません。
肺炎の症状の一つである高熱(38℃以上)などの、体温の急激な上昇はなく、あっても微熱程度です。しかし、いつもより呼吸数は増え、皮膚や舌の乾燥など脱水状態になることが多くあります。
「食欲がない」「元気がない」など、普段と違うと感じた場合は、肺炎を疑って検査をすすめることが必要です。
<誤嚥性肺炎の診断>
肺炎は、胸部レントゲン検査を行い診断します。
誤嚥性肺炎の場合、低酸素血症になっていることが多いため、胸部レントゲンの他に動脈血酸素飽和度の計測も診断の参考となります。肺炎の原因である菌(起因菌)の同定を、喀痰(かくたん)の培養検査で行います。
気管支鏡により、痰を取り出し診断することがより確実ですが、患者さんの状態が良くない事のほうが多いため、起因菌の同定は難しいこともしばしばあります。
<誤嚥性肺炎の予防と治療>
・予防治療
再発を防止するには、パーキンソン病や脳梗塞後遺症として使用されるアマンタジンや 抗血小板作用を持つ脳梗塞予防薬が有効です。これらの治療薬は、咳反射は嚥下反射を改善し、誤嚥性肺炎を予防するとともに、脳梗塞の予防も同時に行えます。
それとは別に、咳反射を亢進させる降圧薬であるACE阻害薬も、誤嚥性肺炎に有効であるとの報告もあります。
また、日々歯磨きを行うことで口内の雑菌を減少させたり、食後2時間程度、座ることで胃液逆流を防ぐことは誤嚥性肺炎の予防を行う上で大切なことです。さらに、高齢者の場合、歯茎をマッサージすることで嚥下反射が改善するので、誤嚥性肺炎の予防に効果的です。
・抗菌薬治療
抗菌薬飲みを頼り解熱できたとしても、誤嚥予防対策をしなければ、ダラダラと微熱が続き、永遠に抗菌薬を止めることができなくなります。
<生活上の注意>
肺炎が原因による死亡順位は全体の第4位、高齢者のみでみると第1位となっています。その多くが、誤嚥性肺炎と考えられており、予後についても年齢を重ねるごとに悪くなります。
ただし、それは年齢そのもというより、併存症などの条件が深く関わっていると考えられています。