その症状、低亜鉛血症かもしれません
●亜鉛とは
亜鉛は体内で作ることができない「必須微量ミネラル」で成人の体内に約2~4g含まれます。成人ではそのほとんどは筋と骨中に含まれますが、皮膚、肝臓、膵臓、前立腺などの多くの臓器に存在し、さまざまな酵素の構成要素となっています。高齢者から子供まで、食の細い方や偏食の方にみられます)
●亜鉛のはたらき
亜鉛は以下のように、あらゆる器官や組織で多様な働きをします。
【精神】イライラや抑うつ症状の低減
【口】味覚を維持し唾液の分泌を整える
【骨格】骨格の発育
【皮膚】コラーゲン合成などの皮膚代謝にかかわる
【免疫】免疫を維持し強化する
【生殖】生殖機能の維持・改善
【肝臓】窒素・アンモニア代謝に関連
【代謝】インスリン合成、膵臓のインスリン放出、糖代謝に必要
【酵素】体内の300種類以上の酵素、サイトカイン、ホルモンなどの活性化する
●日本人の亜鉛の平均摂取量
日本人の亜鉛の推奨量・適正摂取量は、『男性:10mg/日、女性:8mg/日、妊婦:10mg/日、授乳婦:11mg/日(日本人の食事摂取基準2015年版)』とされています。
しかし、2019年の国民・栄養調査報告によると、日本人の亜鉛の平均摂取量は『男性)20歳以上:9.2mg/日、75歳以上8.5mg/日、女性)20歳以上:7.7mg/日、75歳以上:7.5mg/日、妊婦:8.0mg/日、授乳婦:8.2mg/日』と、どの分類でも推奨量を満たしておりません。
●高齢者の血清亜鉛濃度
血清に含まれる亜鉛の濃度に関して、60µg/dL未満を「亜鉛欠乏」、60~80μg/dL
を「潜在的亜鉛欠乏」と定め、若年者と高齢者を比較した実験では、高齢者の約96%が潜在的・顕在的低亜鉛欠症であるという結果を示したものもあります。
●高齢者における低亜鉛血症の主な原因
〇食事摂取量不足
〇消化吸収機能の低下
〇亜鉛欠乏を合併しやすい疾患の罹患している
*糖尿病 *腎不全、血液透析 *肝疾患 など
〇薬剤使用(副作用で低亜鉛血症になる可能性あり)
●低亜鉛血症の方の主な症状
〇元気がなく活気が低下している
〇口内炎ができやすい
〇貧血
〇身長の伸びが悪い(子供の場合)
〇傷が治りにくい
〇味がわからない
〇食欲がない
〇皮膚炎がなかなか治らない
〇脱毛
●低亜鉛血症が及ぼす影響の例
〇塩の味覚異常により、食塩摂取量増加する
〇味覚の異常→食欲低下→栄養障害・骨格筋量の減少し体力が低下し転びやすくなる
〇テストステロン低下・IGF-1低下→栄養障害・骨格筋量の減少
●亜鉛を多く含む食品の例[亜鉛含有量 mg/100];カロリーに気を付けながら摂取をお勧めします
【魚介】〇牡蠣[13.2mg] 〇たらこ[3.1mg]
〇ホタテ貝(生)[2.7mg] 〇うなぎ[1.4mg]
【肉・卵類】〇豚レバー[6.9mg] 〇牛・肩ロース(赤肉、生)[5.6mg]
〇鶏レバー[3.3mg] 〇卵黄[4.2mg※1個:0.7mg]
【豆類・木の実】〇カシューナッツ(フライ)[5.4mg]
〇アーモンド(フライ)[4.4mg]
〇納豆(糸引き)[1.9mg※1パック:0.8mg]
〇豆腐(木綿)[0.6mg※1丁:1.8mg]
【乳製品】〇プロセスチーズ[3.2mg]
【穀類】〇精白米[0.6mg※茶碗一杯:0.9mg] 〇そば(ゆで)[0.4mg]
〇食パン[0.8mg※6枚切り1枚:0.5mg]
-兒玉 浩子ほか:日本臨床栄養学会雑誌2019;40(2):120-167.より改変-
●亜鉛不足に対する当院での取り組み
〇血液検査による血清亜鉛濃度の測定
〇栄養指導
〇亜鉛製剤の処方
当院では自覚症状が気になる方に積極的に検査、治療を実施しております。
水曜日以外、毎日検査を実施しており予約は不要です。
お気軽にご相談ください。