新型コロナウイルス(COVID-19)罹患後症状と今後の課題
COVID‐19(新型コロナウイルス)の発生から4年以上経ち、世界中で多くの知見が集積され、感染対策や診断・治療・予防法が確立されつつあります。
そのような中、新たな課題としてCOVID-19に罹患した患者の一部に、さまざまな「罹患後症状」(いわゆる“後遺症”)を認めることがわかってきました。
罹患後症状は特に医療を要さない軽度の症状から、就学・就労に影響をあたえる症状までさまざまです。
COVID-19急性症状の強さや性別、基礎疾患など、罹患後症状の発現リスク因子について国内外で報告1),2)されていますが、必ずしも重症化リスク因子と一致しておらず、いずれの年齢、重症度の患者でも発症しうると考えられています3)。
そのため、若い人や基礎疾患のない人でも、重症化リスクが低いにもかかわらず、罹患後症状を呈する可能性があります。
罹患後症状の発生機序の1つとして持続的なウイルス感染が挙げられていることから3)、急性期の抗ウイルス治療薬4),5),6)が罹患後症状の発症抑制に寄与する可能性があると考えられます7)~10)。
〈長崎大学大学院医歯薬学総合研究科 呼吸器内科学分野(第二内科) 教授 迎 寛 先生のコメントより〉
1)Subramanian A., et al. :Nat Med., 2022, 28, 1706 2)Morioka S., et al. :Public Health, 2023, 216, 39
3)Davis HE., et al. :Nat Rev Microbiol., 2023, 21, 133 4)Mukae H., et al. :Antimicrob Agents Chemother., 2022, 66(10), e0069722
5)Mukae H., et al. :Clin Infect Dis., 2023, 76(8), 1403 6)Li G., et al. :Nat Rev Drug Discov., 2023, 22, 449
7)Mazzitelli M., et al. :J Med Virol., 2023, 95(3), e28660 8)Xie Y., et al :BMJ, 2023, 381, e074572
9)Xie Y., et al :JAMA Intern Med., 2023, e230743 10)迎 寛ほか :Precision Medicine, 2023, 6(4), 291
【罹患後症状の発症メカニズム(仮説)】
罹患後症状の原因やメカニズムに関しては未だ不明な点が多く、さまざまな仮説が報告されています。
組織への持続的なウイルス感染、免疫調節不全、腸内細菌叢への影響、自己免疫、微細血管での血液凝固と血管内皮細胞の機能障害、脳幹や迷走神経のシグナル伝達の機能障害など、複数の原因が絡み合って発症すると考えられています。
【罹患後症状】
COVID-19罹患後症状は、「COVID-19罹患後に、感染性は消失したにもかかわらず、他に明らかな原因がなく、急性期から持続する症状や、あるいは経過の途中から新たに、または再び生じて持続する症状全般」とされていますが、未だ不明な点が多くあります。
罹患後症状は、検査異常として出てこないこともあり、また、さまざまな症状があるため、治療法が確立されていません。
≪代表的な罹患後症状≫
♦疲労感・倦怠感 ♦関節痛 ♦筋肉痛
♦咳・喀痰 ♦息切れ ♦胸痛
♦記憶障害 ♦集中力低下 ♦頭痛
♦抑うつ ♦嗅覚障害 ♦味覚障害
♦動悸 ♦下痢・腹痛 ♦脱毛
♦睡眠障害 ♦筋力低下
【診断12ヵ月後、約30%に罹患後症状が残存】
罹患後症状の頻度・持続期間については国内外でさまざまな報告があります。
日本の報告として代表的な、急性期(診断後~退院まで)・診断後3ヵ月・6ヵ月・12ヵ月の追跡調査では、診断12ヵ月後でも罹患者全体の30%程度に、1つ以上の罹患後症状が認められました。
〈厚生労働科学特別研究事業:新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の長期合併症の実態把握と病態生理解明に向けた基礎研究(研究代表者:福永 興壱(慶應義塾大学))令和3年度 総括研究年度終了報告書〉
【当院における罹患後症状の治療に関して】
当院では各種罹患後症状に対して、漢方の処方や自律神経の検査、各専門外来への案内など様々な方法で治療を行っております。
例えば、咳・痰などは予約制で呼吸器内科専門医の診療を受けられます。必要があれば、胸部のレントゲンやCTの撮影も可能です。
また、頭痛に関しては、予約なしの一般内科にて、いつでも自律神経の影響や頭部周辺の筋緊張の有無などを調べることができます。もちろん予防薬や頓服薬も処方可能です。
COVID-19に罹患してから心身の不調が長引いているという方は、まずは一度、ご予約不要の一般内科にてご相談ください。
COVID-19罹患後症状に関しては、こちらの過去の記事もご参照ください。
▶新型コロナウイルスの後遺症について(東京都福祉保健局「新型コロナウイルス感染症 後遺症リーフレット」より)