MCI(軽度認知障害)を見逃さないために

♦「脳の機能が健康な状態」と「認知症」の中間の段階を『MCI(軽度認知障害)』といいます
♦65歳以上の約8人に1人が認知症、約7人に1人がMCIといわれています
内閣官房ホームページ:令和5年度老人保健事業推進等補助金(老人保健健康増進等事業分)
「認知症及び軽度認知障害の有病率並びに将来設計に関する研究」
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/ninchisho_kankeisha/dai2/siryou9.pdf (2024年12月9日閲覧)
♦加齢によるもの忘れとMCI、認知症の違い
加齢による もの忘れ | MCI (軽度認知障害) | 認知症 | |
原因 | 脳の生理的な老化 | 脳の神経細胞の変性や脱落、 脳血管の障害 | 脳の神経細胞の変性や脱落、 脳血管の障害 |
もの忘れ | 体験したことの一部分を忘れる (ヒントがあれば思い出す) | 体験したことの一部分を忘れる (ヒントがあれば思い出すことが多い) | 中等度以降の認知症では 体験したことをまるごと忘れる |
症状の進行 | あまり進行しない | 認知症に進行する場合もあれば、 健常に戻る場合もある | だんだん進行する |
判断力 | 低下しない | 少し低下する | 低下する |
自覚 | 忘れっぽいことを自覚している | もの忘れの自覚はあることが多い | 忘れたことの自覚が薄れる |
日常生活 | 支障はない | 支障はあるが、何らかの工夫や 支援があれば自立できる | 中等度以降の認知症では 支障があり、自立できない |
川畑信也:臨床医のための 医学からみた認知症診療 医療からみる認知症診療 診断編(中外医学社), 2019, p63 を元に
繁田 雅弘 先生(東京慈恵医科大学名誉教授 医療法人社団彰耀会・栄樹庵診療所院長)が作成
♦MCIは早期発見が大切
MCIのうちに発見し、早期に対策を行うことで、改善が見られたり発症を遅らせたりできる可能性があります。
MCIから健常に認知機能が戻る人は16~41%/年、認知症に進む人は5~15%/年との研究結果もあります。
日本神経学会監修:認知症疾患診療ガイドライン2017(医学書院)2017; p147 を元に作成
♦早期の対策で自立した生活を維持
生活の質を維持し、「自立した生活」「今と変わらない生活」をより長く続けるために、早期の対策が大切です。
MCIは、できる対策をして、「変化のないことはよいこと」と捉え、根気よく対応していく必要があります。
中島健二ほか編:認知症ハンドブック第2版(医学書院)2020;p491,496を元に作成
Porsteinssion AP , et al.:J Prev Alzheimers Dis 2021; 8(3): 371-386を元に作成
普段の生活で見られるサイン | 普段の生活で見られるサイン(注意力や態度など) |
□何度も同じことを尋ねる | □注意力が低下した |
□物の名前が出にくくなった | □意欲が低下して、趣味や外出に消極的になった |
□約束を忘れてしまうことが増えた | □もの忘れの自覚はあるが、他人事のように感じる |
□前日の昼食、夕食の内容が思い出せない | |
□新しい家電の使い方を覚えるのに時間がかかる | |
家事で見られるサイン | 外出先で見られるサイン |
□ものを探し回ることが増えた | □仕事にミスが増え、支障が出るようになった |
□整理整頓が難しくなり、 部屋が散らかるようになった | □突然、電車の乗り継ぎがわからなくなったり、 道に迷うなどの経験をした |
□決まった料理ばかり作るようになった | □メモを取ることが増えた |
□料理の味付けが以前と変わった | |
□賞味期限切れの食べ物が増えた |
中島健二ほか編:認知症ハンドブック第2版(医学書院)2020:p487-489を元に岩田 淳 先生(東京都健康長寿医療センター副院長)が作成
ご自身やご家族の方が上記サインに気づいたら、是非お早めにご相談ください。
