最新の片頭痛治療とは?
片頭痛治療薬「トリプタン・ゲパント・CGRP関連薬」それぞれの役割と使い分けについて

「片頭痛は市販の鎮痛薬で我慢するもの」
そう考えている方は少なくありません。ですが、片頭痛は単なる「頭痛」ではなく、日常生活や社会活動に大きな影響を及ぼす神経疾患です。
近年の研究によって片頭痛の病態解明が進み、新しい治療薬も次々に登場しています。現在は、痛みを抑えるだけでなく、片頭痛そのものを起こりにくくする治療が広く行われるようになりました。
この記事では、現在の片頭痛治療の中心となっている
- 💊 トリプタン製剤
- 💊 ゲパント製剤
- 💉 CGRP抗体注射
について、それぞれの特徴や違い、どのように使い分けられているのかをご紹介いたします。
片頭痛はどうして起こるの?
以前は、「片頭痛は脳の血管が広がることで起こる」と考えられていました。
現在では、三叉神経という神経が過敏になり、CGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)という物質が放出されることで、炎症や痛みが引き起こされる病気と考えられています。
CGRPが放出されると、
- →炎症が起こる
- →血管が拡張する
- →痛みを伝える神経が刺激される
という一連の流れが始まり、「ズキズキ」と脈打つような痛みや、吐き気、光・音への過敏さなどの症状が現れます。
現在の片頭痛治療は、このCGRPや三叉神経の働きをいかにコントロールするかが大きなテーマになっています。
トリプトン製剤とは?片頭痛発作を止める代表的な薬
トリプタン製剤は、1990年代から使われている片頭痛治療薬で、現在でも発作時治療の第一選択となることが多い薬です。
主な特徴は、
- 発作時に服用する薬
- 比較的速やかに痛みを抑える
- 吐き気や光・音への過敏さも改善することがある
という点です。
◆なぜ「痛くなり始め」に飲むことが大切なの?
片頭痛は、突然ピークの痛みになるわけではありません。
発作が始まると、
- 1.三叉神経が興奮する
- 2.CGRPなどの物質が放出される
- 3.炎症が広がる
- 4.痛みを伝える神経がどんどん敏感になる
という経過をたどります。
トリプタン製剤は、この連鎖が広がる前にブレーキをかける薬です。
そのため、「痛くなり始めたら、できるだけ早く服用する」ことが最も効果的とされています。
片頭痛が数時間続くと、脳や脊髄の痛みを処理する回路自体が敏感になっているため、十分な効果が得られないことがあります。
そのため、「我慢してから飲む」よりも、「早めに飲む」ことが重要なのです。
ゲパント製剤とは? 新しいタイプの片頭痛治療薬
近年登場したゲパント製剤は、片頭痛の原因物質であるCGRPの働きを直接ブロックして痛みの信号や炎症を抑える仕組みの飲み薬です。
日本では、「ナルティークOD錠」や「アクイプタ錠」が近年承認・発売されました。
トリプタン製剤と異なり、血管を収縮させる作用がほとんどありません。
そのため、
- トリプタンが効かなかった人
- トリプタンの副作用が気になる人
- 心血管疾患などでトリプタンが使いにくい人
にとって、新しい選択肢となっています。
また、薬によっては発作時の治療だけでなく、予防目的でも使用できることが特徴です。
CGRP抗体注射とは? 片頭痛を起こりにくくする治療
CGRP抗体注射は、頭痛を引き起こす原因物質の一つである「CGRP」を狙い撃ちにする予防治療薬です。
CGRP抗体注射は、「痛みを止める薬」ではなく、片頭痛そのものが起こる回数を減らすための予防治療です。
日本で承認されているCGRP抗体注射は以下の3種類です。
- 💉 エムガルティ
- 💉 アジョビ
- 💉 アイモビーグ
月1回程度の注射で、CGRPの働きを長期間抑えることで、
- 頭痛の日数を減らす
- 痛みの強さを軽くする
- 発作時に必要な薬の回数を減らす
ことが期待できます。
「毎月何回も片頭痛がある」「市販薬やトリプタンを何度も使っている」という方では、こうした予防治療が検討されます。
ゲパント製剤とCGRP注射はどちらもCGRPという同じ仕組みを標的にしていますが、「必要なときだけ使うか」「ずっと予防するか」というふうに役割が少し違います。
ゲパント製剤 | CGRP注射 |
|---|---|
飲み薬 | 注射 |
発作時に飲める | 発作時には使わない(予防専用) |
予防にも使える薬がある | 予防専用 |
毎日または必要時に服用 | 月1回程度の注射 |
つまり、
- 「今起きている頭痛を止めたい」→ ゲパント
- 「そもそも頭痛を減らしたい」→ CGRP注射
というように使います。
トリプタン・ゲパント・CGRP関連薬、どう使い分けるの?
現在の片頭痛治療は、「どの薬が一番優れているか」を選ぶのではなく、患者さん一人ひとりの症状や生活に合わせて組み合わせることが基本です。
たとえば、
月に数回程度の片頭痛
→ 発作時のみトリプタンやゲパント製剤を使用
月4回以上の片頭痛
→ 発作時治療に加え、予防治療を検討
月8~15回以上の片頭痛
→ CGRP抗体注射などの予防治療を積極的に導入し、残った発作に対してトリプタンやゲパント製剤を使用
というように、頭痛の頻度や重症度によって治療方針が変わります。
どれか一つが万能なのではなく、それぞれ役割が異なるため、患者さんによっては組み合わせて使われます。
同じCGRP関連薬の中で、別の薬剤に切り替えることもありますし、同じ作用機序でも、効果が出る方と出にくい方の差が報告されています。
また、他の急性期治療薬や既存の予防薬と併用することもあります。
効きにくい時は、薬が合わないだけでなく、別の頭痛が重なっていることもあります。診察で他の薬との飲み合わや、別の頭痛が重なっていないかを確認していきます。
※「3つの薬の違い」
トリプタン | ゲパント | CGRP注射 | |
|---|---|---|---|
形状 | 飲み薬 | 飲み薬 | 注射 |
目的 | 発作を止める | 発作+予防 | 予防 |
飲むタイミング | 痛くなり始め | 発作時・毎日 | 月1回程度 |
特徴 | 効き目が速い | 血管を収縮させない | 頭痛の日数を減らす |
まとめ
片頭痛治療は、この10年ほどで大きく進歩しました。
かつては「痛くなったら鎮痛薬を飲む」という対症療法が中心でしたが、現在では発作を抑える治療と、片頭痛を予防する治療を組み合わせる時代になっています。
「月に何度も頭痛がある」「市販薬が手放せない」「薬を飲んでも十分に効かない」と感じている方は、治療法を見直すことで生活の質が大きく改善する可能性があります。
片頭痛は、我慢する病気ではありません。適切な診断と治療によって、頭痛に悩まされる日々を減らせる可能性があります。気になる症状がある場合は、一度ご相談ください。
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