頭を強く打ったときの注意点
高齢の方を中心に、「転倒にて頭部を強打しました。どうしたらいいですか?」という質問が増えております。 ご自身や周囲の方が頭を強く打ったときには、下の症状がないか注意してください。また、下の症状がなくても、激しい運動はすぐに中止し安静にしてください。 【頭部を打った直後の危険な症状】 ・意識がなく会話ができない ・傷があり出血している ・打ったところがひどく腫れている ・頭痛がする ・吐き気がある/嘔吐した ・物が見えにくい ・鼻や耳から出血している ・ぼーっとする ・歩くとふらつく ・身体の一部に力が入らない 上記症状が一つもなく、本人が元気である場合には脳の損傷の可能性は低いですが、意識が低下したり、脱力・嘔吐したりがある場合は救急で病院を受診してください。症状が軽度でもご心配な方は、脳神経内科、外科にて脳の画像検査を実施することをおすすめします。当院では当日に予約なく頭部CTを撮影し、脳出血等の脳損傷の有無をすぐに確認できます。 ただし、検査で異常が見られなくても、しばらく経ってから症状が表れることがあります。脳の血管についた傷が小さい場合、直後の画像検査では発見できないことが多いため時間の経過とともに漏れ出た血液が頭蓋内に溜まっていくと、脳を圧迫し、命に関わる危険性もあります。 そのため頭を打ってから1~2日間は特に注意をして、入浴や運動、飲酒などは控え、安静に過ごしましょう。 また、頭蓋内の出血による症状は、1~2か月経ってから出現することもあります。特に高齢者の場合、受傷から1か月以上経っていても、下の症状が見られたら、すぐに当院か医療機関に連絡してください。 【時間が経っていても危険な症状】 ・吐き気があり繰り返し嘔吐する ・ひきつけやけいれんを起こす ・頭痛がだんだんとひどくなる ・頭がぼーっとして物忘れがひどくなる ・手足の力が入りにくい ・ふらふらするなど歩行が普段と異なる ・すぐに眠り込んで呼びかけても起きない ※頭を打ったあと、眠る際は3~4時間おきに軽く声をかけ、意識の有無を確認してください ・話をしていても受け答えがおかしく、見当違いのことを話す ・目が見えにくい、焦点が定まらない、物が二重に見える ・鼻や耳から水のようなものが流れてくる、血液が混じる ・元気がない、機嫌が悪い(子供の場合、ずっと泣き続けている等) ※高齢者や小児の場合は、本人が自覚症状をうまく伝えられない場合があります。ご家族の方もこの注意点をご確認いただき、普段と様子が違うようであれば、当院にご相談ください。 以下、頭部を打った際に考えられる傷病名です。 皮下血腫 たんこぶ 皮膚と頭蓋骨の間で出血を起こした状態です。多くは冷却や安静で治癒しますが、血腫が大きくぶよぶよとする場合は、骨折の可能性があるので、画像検査をおすすめします。額など目に近い部分では、血が目の周囲に落ちてくるので、驚かれる方がいますが、目には異常がないことがほとんどです。 脳震盪 (ノウシントウ) 頭痛、吐き気、集中力の低下、言葉が出づらい、一時的な記憶障害などの症状が表れます。スポーツで起こりやすいので、その場合は絶対にプレーを再開しないでください。再受傷した場合、死亡事故に繋がる危険があります。 外傷性 くも膜下 出血 脳は外側から頭蓋骨-硬膜-くも膜に覆われており、くも膜と脳の間で出血した状態です。すぐに投薬や手術など適切な治療が必要です。 急性硬膜下 血腫 急性硬膜外 血腫 硬膜とくも膜の間で出血した場合が「急性硬膜下血腫(発症:早い)」、頭蓋骨と硬膜の間で出血した場合が「急性硬膜外血腫(発症:遅い)」です。どちらも手足の痺れや麻痺、悪心、嘔吐、痙攣、瞳孔の左右差などが出現し、CTで診断できますが、緊急手術が必要となる場合もあります。 脳挫傷 (ノウザショウ) 脳自体が損傷した状態です。障害を受けた部位に応じて、身体の片側の麻痺、言葉が出づらい、理解できない、意識低下、呼吸困難などの症状が表れることがあります。後遺症として、後述の高次脳機能障害が発症することもあります。 高次脳機能 障害 「記憶障害」:思い出せない・新しく覚えられない、「注意障害」:注意力散漫・集中力低下、「遂行機能障害」:考える・解決するといったことが難しくなる、「社会的行動障害」:無関心やイライラ・性的逸脱行為・ギャンブルへの没頭などが挙げられます。 頭蓋骨骨折 身体の片側の麻痺や感覚障害・言語障害・痙攣などの症状を引き起こす可能性があり、頭蓋骨の内圧が高くなると、強烈な頭痛・嘔吐・意識障害などを伴うこともあります。頭蓋骨骨折が疑われる場合は、すぐに救急車を呼びましょう。